日本最古級の現役水車「三連水車」の存続が危うくなっている。福岡県朝倉市の観光シンボルだが、管理しているのは農家たちで、負担が膨らんでいるからだ。独自の技をもつ水車大工の後継者もいない。もう電気ポンプにするしかないか――。そんな声が出ている。
堀川用水に並ぶ三つの水車が勢いよく回り、水をくんでは樋(とい)にざあざあ注ぐ。川より高い田に水の力だけで水を送る、江戸時代にできた水車だ。近くの二連水車ふたつと合わせて国史跡に指定されている。「疎水百選」や「世界かんがい施設遺産」にも選ばれ、市の観光パンフの表紙を飾る。次々と人が訪れては写真を撮っていく。
その横で山田堰土地改良区の古賀敏雄理事長(70)がつぶやいた。「古き良きものをなくしたくないけど、農家の負担が重すぎる」
水車の所有者は周辺の農家約1千戸でつくる改良区だ。農家から集めた賦課金で水車を回している。
補修や組み立てにかかる経費は年150万円ほど。行政の支援は年50万円の市文化財補助金のみ。木の水車はすり減るため5年ごとに造り替え、二連と合わせて1千万円近くかかる。農林水産省などの補助はあるが、3割は改良区がもつ。
こうした経費が年々膨らんでいる。部材となるスギやアカマツ、カシはかつて地元で入手できたが、今は県外まで行かないと良いものを調達できない。人材難で人件費も高騰している。ウッドショックも重なり、2年後の更新時の見積額は1500万円ほど。3割で450万円の負担となる。
壊れた時の修理なら文化庁の補助が出るが、5年ごとの更新は「日常的な維持管理」とされ、対象にならない。
一帯は穀倉地帯で、米価が高…
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル